研究課題
基盤研究(B)
可逆的変性カチオン化法による変性タンパク質の可溶化条件の最適化と、in cellフォルディング法によるタンパク質細胞内導入の定量化を行った。ガン抑制タンパク質:p53を大腸菌におけるタンパク質発現系で不溶性のインクルージョンボディとして発現し、1分子内に存在する10個のシステイン残基に対し、ジスルフィド結合を介してカチオン性ポリマーであるポリエチレンイミン(PEI,平均分子量600)を連結した。精製後のPEI600-SS-p53の分子量を質量分析計で測定したところ、1分子あたり6個のPEI600が結合していたが、残り4個のシステイン残基は立体障害により修飾できないことが確認された。ことから、小分子の1価の正電荷導入試薬(APS-Sulfonate)で残存するシステインを保護することが重要であると判断された。また、変性・還元状態のp53をAPS-Sulfonateで可逆的変性カチオン化したAP-SS-p53(net charge:+6)も可溶性であったため、PEI600-SS-p53(+81.6)と細胞内導入能の比較を行った。その結果、p53を欠損するSaos-2細胞に対し、より高い正電荷を保有するPEI600-SS-p53の方が10倍以上の効率で細胞内導入に伴う機能発現が確認され、高い正電荷を付与することは細胞内導入を亢進するために有効な手段であることが確認された。次に可逆的変性カチオン化法によるタンパク質可溶化の一般性を確認するため、大腸菌でインクルージョンボディとして発現されるヒトβアクチンを材料として可溶化を試みた。βアクチンは疎水性の高い酸性タンパク質(-10)であり、分子内に6個のシステイン残基を保有するが、分子量300以上のPEIを用いて可逆的変性カチオン化を行った場合にのみ、高い溶解性を付与することができ、さらに4℃で半年以上保存が可能なことが確認された。以上の結果、多種多様の物性のタンパク質を変性状態として可溶化・精製するための方法論と試薬系が確立した。これらの技術を活用して、これまで6種類のタンパク質を用いた評価系すべてでin cell foldingが可能なことを確認し、本技術の一般性を証明した。
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