研究概要 |
本年度は最終年度にあたり、バイオマスを介した生物的物質生産プロセスの構築の研究をさらに進めた。 1.エタノール高生産株の育種 Moorella sp. HUC22-1株のエタノール生産性を向上させる手段の一つと考えられる分子生物学的育種に必要な遺伝子導入系の開発を行った。その結果、相同性組換えとエレクトロポレーション法を用いたゲノムDNAへの組み込みによる形質転換法を用いて、ウラシル合成に必要なdihydroorotate dehydrogenaseとorotate phosphoribosyltransferaseをコードする遺伝子(pyrD、pyrE)を欠損したウラシル要求性株を作製できた。現在、この要求性株をホストに、pyrDとpyrEを選択マーカーに用いて遺伝子導入系の開発を進めている。 2.代謝特性の解析 HU22-1株を様々な有機酸を基質として回分培養を行い、各基質における代謝特性の解析を行うとともに、代謝経路上の酵素活性を測定した。その結果、どの基質でもエタノールを生成する事はなかったが、マリルCoA経路を介したグリオキシル酸及びグリコール酸の異化代謝に伴う基質レベルのリン酸化によってATPを生成できる事が示唆された。 3.培養系でのエタノール生産 これまで、H_2/CO_2ガス基質を用いたが、本年度は合成ガスの主成分であるCOを用いた。当初20%COガスまでしか培養できなかったが、20%COガス基質で増殖した菌はさらに60,80%COでも増殖可能となり、このような高COガス下での馴養を繰り返す事により、100%COガス下でも増殖可能となった。COガス下での増殖は最終的に、H2/CO2の場合に比べて8倍となった。また、酢酸/エタノール生成比も低下し、エタノール生産系ヘシフトした。最終的に、加圧型撹拌型発酵槽を用いてpH制御下での高濃度培養の可能性が開けた。 4.休止菌体での酢酸のエタノール変換 COガスあるいはH2-CO2ガス培養した菌体を用いて、酢酸のCOによるエタノール変換を行った。その結果、メチルビオロゲン存在下、pH7でエタノール収率、147g/kg dry cellを得る事ができた。
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