PARおよびLSADHは、様々なアリールケトンや2-アルカノン等の基質を不斉還元すると同時に、安価な2-プロパノールの酸化反応を触媒しNADHを再生することができる極めて有用な不斉還元バイオ触媒である。そこで、これら酵素の汎用性を高める目的で、類縁酵素遺伝子の土壌からの網羅的分離を行い、PARとLSADHの基質特異性が異なる酵素ライブラリーの構築を目指した。 PARについては、相同遺伝子の内部共通配列部分を基に縮重プライマーを作成し、これを各種微生物(主にRhodococcusとその類縁菌)ゲノムやメタゲノムに対してPCRを行い、約60種のDNA断片(約950bp)の増幅に成功した。また、約30種の当該遺伝子のシークエンス解析を終了した。その結果、これら遺伝子群のPARに対する相同性は、95〜99%、アミノ酸配列では3〜12個所が異なる酵素遺伝子群が得られた。また、一種類の土壌メタゲノムから十分変化に富む遺伝子群が得られることも明らかとなった。現在、既に構築してあるSar268系発現ベクターにこの部分をカセットとして導入し、PARのキメラ酵素として高発現させる方法を確認しており、今後、これら遺伝子を用いて各種基質に対してスクリーニングを行う予定である。 またこうしたカセット法とは、異なる手法にてLSADHのメタゲノムライブラリーの作製を試みた。LSADH生産菌の類縁菌ゲノム情報を基にして、LSADHのN-/C-末端の相同配列縮重プライマーを設計し、これを基にメタゲノムからLSADHと類似の立体選択性と特異性を有する約30種のライブラリー調製に成功した。また、これら遺伝子のシークエンスと解析を終了した。その結果、これら遺伝子群は、Burkholderia sp.やPseudomonas sp.のshort-chain ADHと80〜98%の相同性を示した。 今後、作製したライブラリー(PARとLSADH)を用いて、各種ケトンに対する反応性を評価し、不斉還元反応のスクリーニングに使用するとともに、メタゲノムからの遺伝子ライブラリー数を増やす計画である。
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