研究概要 |
1.複合脂質膜のヒト乳がん細胞増殖抑制効果および制がんメカニズム リン脂質(DMPC)とPEG系界面活性剤(C_<12>(EO)_n, n=4〜25)を混合して創製した複合脂質膜のヒト乳がん(MDA-MB-453)細胞に対する50%増殖抑制濃度(IC_<50>) の検討を行った。複合脂質膜(HL)はヒト乳がん細胞に対してDMPC単一リポソームと比べ、IC_<50>が約1/2以下と増殖抑制効果が向上することが明らかとなった。また、TUNEL法による蛍光顕微鏡観察を行ったところ、HLで処理したがん細胞は緑色に染色され、アポトーシスを誘導することが明らかとなった。一方、DMPC単一リポソームでは緑色に染色されなかった。 2.アポトーシス誘導のシグナル伝達 HLのヒト乳がん細胞に対するCaspase-3,-8-9活性を検討した。Caspase-3は0.5時間から2時間で活性を示し、その後、6時間後まで活性を維持していた。Caspase-8およびCaspase-9は1時間から3時間で活性を示した。次に、ミトコンドリアの関与について検討した。HL23の添加により、ミトコンドリアの膜電位の減少がみられた。以上のことからHLのヒト乳がん細胞に対するアポトーシス誘導においてはCaspase-3,-8,-9およびミトコンドリアが関与していることが明確になった。 3.ゲンタマイシン封入複合脂質膜(GM-HL)の筋ジストロフィー治療実験 筋ジストロフィーモデルマウスを用いてGM-HLの治療効果を検討した。GM-HL投与群では、GMのみと比べジストロフィンの発現率が増大し治療効果が明らかになった。クレアチンキナーゼ値も正常値近くまで低下し、腎不全マーカー値および聴覚検査においても異常は認められず、GM-HLの高い安全性が確認された。
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