焦点面に各バンドが平行配置されたセンサ(視差を有するセンサ)はデータ取得後に位置合わせを行なう必要があるため、地球観測において不利と考えられてきた。地表面上の同一点を各バンドが観測する時刻が異なることから、衛星姿勢の変動を捉えて姿勢情報に反映させることができれば利点となる。本研究においては、Terra/ASTER/SWIRやE0-1/ALIセンサによって取得された画像に対して衛星姿勢の修正を試み、シーン内歪の低減を実証するとともに、ハードウェア構築によりその検証を行い、最終的には準リアルタイムの姿勢検知システムの提案を行なうことを目的としている。 ハードウェア開発では、姿勢計測器および回転ステージの噛み合わせを行い、次年度以降の実験の準備を行なった。ソフトウェア開発では、視差を持つセンサで撮像された画像を細かく分割し、相互相関により相対的なシーン内歪を求めた。歪分布は明確に姿勢の時間変動を示すものであるため、絶対的な姿勢変動を求める手法を検討した。絶対的姿勢変動が滑らかになるように評価関数を設定し、それを最小とするものを選択した。絶対的姿勢値を用いて画像に幾何変換を実施したところ、相対的なシーン内歪が8分の1程度まで小さくなっていることが判明した。現状では成功率が60%程度であるため、推定法をさらに向上させる必要がある。 さらに、全く別の日に撮像した2つの画像に対して、同様の比較から類似のシーン内歪が発生していることを確認した。衛星のロール成分に相当する歪が系統的なものであるため、相対的除去を行なった。その結果、パキスタン地震の前後で撮像された画像に対して、地表面の移動量が明確に現われた。絶対的な姿勢変動除去の成功率が上がれば、有効なデータ解析が可能になるものと期待される。
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