焦点面に各バンドが平行配置されたセンサ(視差を有するセンサ)はデータ取得後にイメージマッチングによる位置合わせが必要となる点で不利である。地表面上の同一点を各バンドが観測する時刻が異なることから、衛星姿勢の変動を捉えて姿勢情報に反映させることができれば利点となる。本研究においては、Terra/ASTER/SWIRやEO-1/ALIセンサによって取得された画像に対して衛星姿勢の修正アルゴリズムを構築し、シーン内歪の低減を実証するとともに、ハードウェア構築によりその検証を行い、最終的には準リアルタイムの姿勢検知システムの提案を行なうことを目的としている。 ハードウェア開発では、姿勢計測器を取り付けた回転ステージに、視差を有する特殊な3ラインカメラを搭載し、ASTER/SWIRを模擬する装置を作成した。ソフトウェア開発では、視差を持つセンサで撮像された画像を細かく分割し、相互相関により相対的な色ずれ傾向の時間変動、すなわち姿勢のロール成分の時間変動を求めた。しかしながらあくまで相対的な変動量であるため、絶対的な姿勢変動を求める手法を検討した。衛星の運動方程式に基づき、絶対的姿勢変動の滑らかさを規範とする評価関数を最小化した。得られた絶対姿勢値を用いて画像に幾何変換を実施したところ、相対的なシーン内歪の低減に成功した。成功率を下げている要因として、幾何補正精度やイメージマッチング精度が上げられるが、幾何補正を高精度化アルゴリズムを開発することでシーン内歪の大きな向上をみた。 さらに、全く別の日に撮像した2つのステレオ画像に対して、衛星のロール、ピッチ成分に相当する歪が系統的なものであるため、相対的除去を行なった。その結果、地震の前後で撮像された画像に対して、地表面の移動量が3次元的に捉えられることを示した。
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