磁気セイルの推進性能に関する数値解析、ソーラーセイルの膜面を利用したエアロキャプチャの有効性評価、水素を用いた誘導結合プラズマ装置と気流診断法の開発、の3点について研究を行った。 磁気セイルに関してはFull PIC法による数値解析を行った。磁場を作るためのコイルの姿勢や太陽風条件を変えて解析を行い、姿勢によっては軌道面外を向く力がセイルに働くこと、コイル軸を軌道面に垂直とすることで姿勢の静安定が得られること、太陽風動圧に対する推進効率は太陽に近づくほど上昇すること、など磁気セイルを用いた探査機システムを検討する上で重要な知見を得た。 ソーラーセイル機では、セイルを惑星周回軌道投入用の空気ブレーキとして2次利用することで燃料がほとんど必要ない低コスト探査機の実現が期待される。ここでは、土星探査を対象とした解析を行った。大気圏飛行解析、空気力を受けるセイル面の構造解析、高層大気を飛行する機体まわりの希薄気体流解析を組み合わせ、総合的な評価を行った。巨大なセイルにより大気飛行中の弾道係数が0.1kg/m^2以下となるため、大気圏突入条件の自由度が広がる、高高度飛行による空力加熱と荷重の大幅緩和、などのメリットがあることを明らかにした。ソーラーセイルと低弾道係数エアロキャプチャの組み合わせは、軽量低コストの外惑星探査機を実現するための手法として有望であることがわかった。 外惑星の大気は水素を主成分とするため、上記のような気流に関する実験データを得るため、誘導結合プラズマ発生装置にノズルと測定部および大容量真空排気装置を取り付けた高速水素気流発生装置を作成した。また、発光分光法により非接触で気流温度や解離度(アクチノメトリ)を測定する手法を確立した。ノズルと測定部はガラス製として気流特性の空間分布を取得し、ノズル中で気流は強い熱化学非平衡状態にあることなどを明らかにした。
|