研究課題
基盤研究(B)
太陽光や太陽風を利用するセイル型宇宙機を惑星大気圏飛行させ、その際に発生する空気力を併用することで燃料不要のままセイル型宇宙機の航行能力を向上させる可能性について、高速気体力学の観点から研究を行い、以下のことを明らかにした。1.FullPIC法による磁気セイルまわりの太陽風プラズマ流れ数値解析を行い、磁場生成コイルの姿勢や太陽風条件の影響を明らかにした。姿勢によっては軌道面外を向く力がセイルに働くこと、発生する推力は同じ大きさのソーラーセイルと比較して著しく小さいことなどから、ソーラーセイルの方が実現は容易と考えられる。2.ソーラーセイル機では、セイルを惑星周回軌道投入用の空気ブレーキとして2次利用することで燃料がほとんど必要ない低コスト惑星探査機が実現できることを示した。このような低弾道係数大気突入では、許容突入条件幅、空力加熱、空力荷重が大幅に緩和されるメリットがある。3.フープ支持の膜構造大気圏突入飛行体が極超音速流中で機能することを風洞実験で実証した。フープを形状記憶合金で製作すると空力加熱で自動展開する飛行体が実現でき、小型低コスト大気突入プローブへの応用が期待される。また、複数のフープを組み合わせてデルタ翼とし形状最適化すれば、5程度の揚抗比が期待される。4.外惑星大気飛行模擬希薄水素プラズマ風洞を開発して各種膜材料の空力加熱実験を行った。高強度材と高耐熱材をコーティングや接着で組み合わせるものが有望であることがわかった。5.ソーラーセイルと大気圏飛行時の揚力利用によるエアログラビティアシストの組合せを検討した。全長約220m、総重量410kgの機体に対し軌道最適化の結果、30km/sの太陽系脱出速度が得られることを示した。これはカイパーベルトまで約30年で達する速度であり、第1世代の恒星間領域探査機として有望と考えられる。
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