研究課題
本研究は摩擦係数0.001レベルの超低摩擦現象が観察されるダイヤモンドライクカーボン(DLC)の宇宙環境でのトライボロジー特性を研究するものである。平成17年度は研究初年度であるため、レーザーパワーの高出力化・安定化により潤滑剤の寿命試験に対応した長時間照射を可能とし、MOS_2に比べて長寿命(長時間照射が必要)なDLCに関する研究を可能とするため、原子状酸素発生装置に付属する炭酸ガスレーザーを半導体スイッチ仕様のALLTECH、ALLMARK APSに変更した。装置系の改良と平行して、水素含有量を変化させた水素化DLCをプラズマCVD、直流アーク法でSUS440C基板上に作製し、原子状酸素照射前後におけるトライボロジー試験を行った。水素含有量は高エネルギーイオン加速器を用いたERDA分析により解析した。これらの試料を用いて原子状酸素照射中に同時摩擦試験を行った。その結果、原子状酸素照射によってDLCの摩擦係数は一時的に増大するが、原子状酸素の照射を中止すると超低摩擦状態に回復すること、二次イオン質量分析法から原子状酸素照射により再表面の高分子成分が減少すること、放射光励起光電子分光法からSi添加DLCではSiの酸化により原子状酸素によるDLCのエロージョンを抑えられる可能性があることなどが明らかになった。さらにフランス側でリヨン工科大学のトライボスコープを用いた解析を行い、現在、データ解析を行っている。これらの結果を踏まえて、平成18年度には平成17年度に整備を行った原子状酸素発生装置を用いて、紫外線を照射したDLC固体潤滑剤のトライボロジー特性についても個々に比較検討を行い、個別の宇宙環境要因がDLCのトライボロジー特性ならびに表面組成・構造に与える影響について考察する。
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