研究課題
本研究は摩擦係数0.001レベルの超低摩擦現象が観察されるダイヤモンドライクカーボン(DLC)の宇宙環境でのトライボロジー特性を研究するものである。平成18年度には前年度に整備した宇宙環境模擬試験装置を用いて水素化DLCに原子状酸素照射を照射し、その前後におけるトライボロジー試験ならびに表面分析を行った。表面炭素原子の結合状態は放射光励起光電子分光法(SR-PES)で、水素含有量は高エネルギーイオン加速器を用いた弾性散乱分析法(ERDA)分析で、さらに炭素密度はラザフォード背面散乱分析法(RBS)により分析を行った。SR-PESの結果からは、原子状酸素を照射したDLC表面の炭素原子の結合状態は若干の酸化物起因のピークが観察されるものの、照射前と大きく変化の無いことが確認された。一方、ERDA,RBSからは水素量ならびに炭素密度の低下が確認され、DLC内部で炭素の酸化によるガス化反応が生じていることが推定された。一方、Siを添加したDLCではSi酸化膜の形成により原子状酸素によるDLCのエロージョンが抑制できることが明らかになった。さらにフランス側でリヨン工科大学のトライボスコープを用いた解析の結果から、Si添加量には最適値があることなども確認された。現在、紫外線を照射したDLC固体潤滑剤の表面状態の変化についても解析中である。来年度は個別の宇宙環境要因、ならびにその複合環境がDLCのトライボロジー特性ならびに表面組成・構造に与える影響について考察するとともに、原子ビームによるDCL成膜についても研究を行う予定である。
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