研究課題
基盤研究(B)
本研究は摩擦係数0.001レベルの超低摩擦現象が観察されるダイヤモンドライクカーボン(DLC)の宇宙環境でのトライボロジー特性を研究するものである。そのために、本研究グループが所有する宇宙環境模擬試験装置を用いて、水素化DLCに軌道上と同一環境で原子状酸素照射を照射し、その前後におけるトライボロジー特性の変化ならびに表面分析を行った。表面炭素原子の結合状態は放射光励起光電子分光法(SR-PES)で、水素含有量は高エネルギーイオン加速器を用いた弾性散乱分析法(ERDA)分析で、さらに炭素密度はラザフォード背面散乱分析法(RBS)により分析を行った。SR-PESの結果からは、原子状酸素を照射したDLC表面の炭素原子の結合状態は表面第一層に酸化物起因のピークが観察されるものの照射前と大きく変化がなく、表面第一層での原子反応が支配的であることが再確認された。一方、ERDA,RBS測定結果からは水素量ならびに炭素密度の低下が確認された。特に2eV以上の運動エネルギーで酸素原子が衝突する場合には、急速な炭素のガス化反応が生じることが、QCMを用いた質量分析ならびにRBS測定より確認され、DLCのエロージョンレートは酸素原子の衝突エネルギーに強く依存していることが明らかになった。さらにNEXAFSの測定結果からは原子状酸素を照射後にはDLC表面のsp2/sp3比が小さくなっていること、相手材がTiの場合にはTiの移着膜がDLC表面に形成されること等も明らかになった。これらの実験結果より、宇宙環境下では保護膜のないDLCは長期間の使用に耐えられないことを明らかにした。この問題を克服するためには、金属ドーピングが有効であることを見出し、水素化DLCの応用範囲を広げることに成功した。さらにULF特性の解明にも貴重な情報が得られた。
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