研究概要 |
わが国の惑星探査ミッションに必要な深宇宙通信では、直径64mの地上アンテナ用いてXバンドで通信を行っているが,回線とビットレートの向上を目的として通信周波数をKaバンドへ移行する動きがある。64mアンテナ建設はコストが掛かる上,Kaバンドでは自重による撓みや指向精度がさらに厳しくなるために困難が伴う。本研究では、1つの大型アンテナの代わりに,より小型なアンテナをアレイ構成したKaバンドのシステムの実現性を検討する.アレイアンテナではアンテナ角度や大気の変動により各アンテナの受信信号の位相が異なる。アレイアンテナシステムでは,各アンテナの受信信号の位相を推定して,各アンテナからの信号の位相をそろえて合成する必要がある。 本研究ではまず信号の捕捉時における時間積算を使用した周波数・位相推定方式を提案する。受信IF信号をフーリエ変換し,周波数に対してキャリアの検出ができるS/Nが得られるまで,積算時間を段階的に増やしていく。S/N改善後に,信号の位相を推定し,位相差をそろえて足し合わせる。64mアンテナでのS/NO=12dBHz、PLL帯域幅1Hzと等価なアレイシステムを目標とする。制限する帯域は軌道推定の実績から600Hz程度の帯域までは無条件に制限できる。更に1000サンプルのFFTで0.6Hzまで絞り、FFTを用いた検索で0.1Hzまで絞り込む。直径20mアンテナ×10基場合、アレイ合成後のS/Nは21.88dB(帯域0.1Hz)であり、このときの位相推定誤差は10degである。この位相補佐をしてアレイ合成を行なった後のS/N(帯域0.1Hz)は、21.88dBであり、キャリア捕捉追尾は十分に可能である。上記をふまえて大気の変動効果や搭載発振器の安定度を含めて積算時間の検討を行っていく。
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