研究課題/領域番号 |
17360417
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
畑中 義博 東京海洋大学, 海洋工学部, 教授 (30228473)
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研究分担者 |
木船 弘康 東京海洋大学, 海洋工学部, 助教授 (90323849)
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キーワード | ディーゼル排ガス / PM / DPF / 環境保全 / 高周波誘導加熱 / 海洋環境 / 大気汚染防止 / 高周波インバータ |
研究概要 |
近い将来、IMO(国際海事機関)においても、舶用ディーゼル機関から排出される粒子状物質(PM)を規制しようという動きが予想されるが、現状においては実用的かつ有効な方法が開発されていない。このような現状において、本研究ではPMを特殊金属フィルターで捕捉し、その再生においては高周波誘導加熱により短時間で再生処理する方法を考案し、すでに国際特許の申請(PCT/JP03/16847)を終えている。本研究では、この舶用DPFの実用化に向けて、小型DPFによって得られた知見に基づき、排気ガスの大容量化に対応すべく大型のDPFを作成し、ディーゼルエンジン(直接噴射式空冷4サイクルディーゼルエンジン、L48ADGY5)の運転において、本来軽油を燃料油として使用するところ、A重油を用いて大量のPMを発生させて大型DPFにおけるPM捕捉、ならびに、その誘導加熱による再生実験を実施した。その結果、PMの捕捉によるクリーンな排ガスの実現、および、誘導加熱による大型DPFの再生を実現することができた。しかし、実験を通して、問題点も浮上してきた。その第一は、誘導加熱のワーキングコイルを巻き付けた大型DPFを構成するセラミックケーシングの構造、材料の問題である。すなわち、セラミックケーシングの大型化において、振動、衝撃等によりケーシングが破損しやすいという材料的欠陥である。その第二は、DPFの再生に要する高周波電力が当初の予想より大きく、やや効率が悪いという問題である。この2つの問題を解決するためには、DPFのケーシングの構造を根本的に見直す必要に迫られた。すなわち、DPF再生において、必要な高周波電力をできるだけ少なく抑制するためには、DPFに巻き付けてあるワーキングコイルと、ケーシング内DPF本体フィルターとの間隔、隙間(ギャップ)をできるだけ小さくする必要がある。しかし、PMを捕捉するDPFのケーシングの構造上、このギャップを小さくしすぎると、ディーゼルエンジンにかかる背圧が上昇し、エンジンの燃焼状態の悪化を招く恐れがある。この問題と、セラミックケーシングの大型化による脆弱生を、一挙に解決する方法として、PM捕捉用DPFケーシング(鋼鉄製に改良)と、フィルターの誘導加熱再生用ケーシング(セラミック製)を分離したDPFの構造を考案した(特願2006-59462号)。その結果、誘導加熱再生用ケーシングの長手方向の長さを短く、小型化することができた。また、誘導加熱再生用ケーシングとワーキングコイルとのギャップを小さくすることが可能となり、DPF再生に要する高周波インバータ出力としての高周波電力を抑制することができた。 今後は、このギャップをどこまで小さくでき、その結果、必要高周波電力をさらに低減できるか、また、ディーゼル排気ガスの容量に対して、どれだけのDPFの表面積(PM捕捉表面積)が必要なのか、さらなる大容量化のためのフィルター構造の検討などを進める予定である。
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