本研究では早期実用化が望まれる舶用DPFの開発にあたり、特殊金属を用いた小型DPFの開発実績に基づき、誘導加熱を適用した大型DPFを試作した。当初の大型DPFでは、PM捕集用ケーシングと、DPF再生用ケーシングは同一のセラミック円筒ケーシングで構成したために、大型化に伴うセラミック構造材としての強度不足が問題となった。この問題を解決するために、研究の過程で、PM捕集用ケーシングと、DPF再生用ケーシングを別のケーシングとして、PM捕集用ケーシングは鋼鉄製、DPF再生用ケーシングはセラミック製とすることによって、DPFの大型化に伴う構造材による強度上の問題を解決した。この捕集・再生用ケーシング分離型DPFを用いて、PMの捕集と最適なフィルタ再生時期の検討という2つの側面から実験検討を行った。PMの捕集に関しては、PM捕集時のDPF入り口、出口間の差圧、圧力変化を連続的に測定し、DPF出口におけるスモークメータによる黒煙濃度を定期的にサンプリングすることにより、黒煙濃度変化と圧力変化の関係を定量的に明らかにした。また、DPF装置内部の圧力変化を把握し、フィルタの深層濾過、ケーク層濾過の遷移期間を推定することにより、DPFの性能を評価検討した。さらに、フィルタの再生についてはワークコイルの巻き数、ギャップ等について比較実験を行い、同一出力電力におけるフィルタ加熱による加熱再生実験において、ワーキングコイルの巻き幅が同じ場合はワーキングコイルの径を小さくし巻き数を多くする方が、また、ワーキングコイルとフィルタのギャップをできるだけ小さくする方が、漏れ磁束が小さくなり、フィルタ加熱温度が上昇し、効率良くフィルタの加熱・再生ができることを明らかにした。今後実用化の観点から、PM低減率をより高める方法や、PM捕集表面積の拡大等に関して、DPFユニットの構造(断熱構造、ワークコイルの材料、構成)、フィルタ材料、および、高周波電源の最適設計等について検討したい。
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