研究概要 |
船舶や海洋構造物などの大型溶接構造物に溶接や切断などの熱加工プロセスによって発生する残留応力や熱変形が,構造物の強度や性能に種々の悪影響を及ぼすことは周知の事実であるが,特に溶接変形に関しては現在でも技術的に解決されているとは必ずしも言い切れない.ここで,溶接変形を拘束の力で抑制することは困難なことから必ず発生するものとして,溶接後に機械加工や熱加工などの後処理によって変形を矯正している場合が多い.しかし,生産プロセス全体の効率を考えると,溶接後に何らかの処理を加えることなしに溶接プロセス中に変形を制御してしまうのが好ましい.したがって,溶接や熱加工によって発生する溶接変形を評価し,さらには制御することが重要な技術課題となっている.本研究では「温度分布を制御することによって溶接変形を自在にコントロールする」手法の物理的機構を一般化するとともに,種々の実験および数値解析を行うことによって温度分布制御溶接による変形制御法を具体的に提案し,その定量的効果を明らかにするため,詳細な検討を進め,以下のような成果を得た. 1.溶接変形発生メカニズムの理論的把握 ・・・溶融部近傍での変形発生機構と温度分布との関係の系統的解明 2.溶接変形挙動と温度分布・温度履歴の系統化による変形インプロセスコントロールの考え方を確立した. ・・・熱的プロセスを用いた変形リアルタイム制御法の開発 3.熱的プロセスを用いた溶接変形制御法の効果を定量的に評価した. ・・・実験および数値解析を併用した溶接変形を最小化する溶接プロセスの提案 4.高信頼性変形制御継手の溶接方法について検討し,実機適用への見通しを得た. ・・・熱的プロセスを用いた溶接変形制御継手の性能試験により健全性を確認した. また,国内外の学術雑誌,会議などに成果を発表した.
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