研究課題
基盤研究(B)
水流中を進む固体壁面上に発達する乱流境界層中に微細な気泡を注入すると、摩擦抵抗を最大80%も低減させることが知られており、特に船舶にとって有望な抵抗低減デバイスと考えられており、速度7m/sまでの低速では実船実験など実用化レベルまで研究が進んでいるが、高速域については研究が殆ど無いため、本研究を実施した。本研究では、小型チャンネル乱流場を用いた摩擦抵抗低減メカニズムの解明実験、大型平板を用いた摩擦抵抗低減効果の速度依存性実験、そして曲率影響実験の3つの実験的研究に取り組んだ。メカニズム解明に関する研究では、小型チャンネル乱流場に大きさの異なるバブルを注入した状態で気泡形状変化計測、PTVによる乱流場計測、壁面せん断力計による摩擦低減計測を同時に行い、レイノルズ数の増加に伴い摩擦低減効果が増加する傾向について、大気泡の場合には気泡の形状変化と運動が壁面摩擦とレイノルズ応力に影響を与えていることと、バブル径が小さくなるとレイノルズ応力が減少し摩擦低減効果の増加につながることを明らかにした。大型平板を用いた研究としては、長さ400mの曳航水槽において長さ22mの平板を最高速度10m/sまで曳航した状態で、船首端から3mの位置において気泡を船底に注入し、気泡による局所摩擦の低減効果と全抵抗の低減効果を計測した。このような大スケールでの実験データとしてはSandersら(2007)が3mx3m断面をもつキャビテーション水槽で長さ13mの平板を用いて最大速度18m/sで気泡による局所摩擦の低減効果を測定した結果があるのみであり、本実験結果とSandersらの実験結果は、速度域とスケールで補完の関係にあり、高速且つ大スケールでの気泡による摩擦低減効果の貴重な検証データとなる。固体表面の曲率や圧力勾配の影響を調べる研究としては、キャビテーション水槽中に長さ1.8mの平板を置いた状態と、平板上に長さ1.3mの半翼型を設置した状態において、最高速度12m/sまでの気泡実験を行い、局所摩擦低減呂及び局所ボイド率分布を計測した。その結果、翼型表面上では摩擦低減効果の顕著な増加が見られ、曲率/圧力勾配影響が大きいことが明らかになった。
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