研究概要 |
1,還元細菌の選定と貴金属イオンのバイオ還元・析出 Fe(III)還元細菌Shewanella algae、Shewanella oneidensis の静止細胞を用いて、貴金属イオン(Au(III)、Pt(IV),Pd(II))のバイオミネラリゼーションに関する実験を室温、嫌気的環境下において行った。中溶液(pH7)の場合には、これら貴金属イオンは30分以内に還元され、貴金属ナノ粒子が細胞表面に析出した。Shewanella 属細菌(3×10^9 cells/ml)のバイオ還元力は、20mMクエン酸溶液の化学的還元力(50℃)に匹敵することが明らかになった。細胞濃度の増加、電子供与体である乳酸塩濃度の増加に伴い、Pd(II)イオンのバイオ還元・析出速度が増加した。 2,生成粒子の性状評価と粒子生成場の検討 バイオ還元実験後に採取した細菌細胞に対するX線近吸収端構造(XANES)分析によって、細胞内に存在する貴金属の原子価は0価(金属粒子)であることが明確になった。細菌細胞の薄切片をTEM観察・EDX分した結果、中性条件下で生成した貴金属ナノ粒子は細胞表面近傍のペリプラズム域に存在することがわかった。酸性条件下(pH2.8,2.0)では、板状金ナノ粒子(粒子径15〜200nm程度)が細胞外(液相)に生成した。出発溶液のpHを調整することによって、金ナノ粒子の生成場、形状、粒子径が変化することを見出した。 3.模擬浸出液を対象にした貴金属のバイオ還元・回収 Au(III)イオンのバイオ還元・析出は、酸性溶液(pH2.0)に対しても0分程度の短時間に完了した。また、非シアン系浸出剤であるチオ硫酸アンモニウム塩溶液(均相触媒Cu(II)イオン)を用いるプリント基板からの金の浸出を想定して、本溶液中のAu(I)イオンに対するバイオ還元実験を行った。弱塩基性溶液(pHlO)においてCu(II)イオンが共存する場合でも、Au(I)イオンのバイオ還元・析出は30分以内にほぼ完了した。 以上の研究結果は、貴金属含有溶液の連続処理に適したバイオ還元反応器の開発を図るうえで重要な知見となる。
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