研究概要 |
不溶性フェロシアン化物の合成、パラジウムの吸着特性評価およびキャラクタリゼーションを実施し、以下の成果を得た。 1.フェロシアン化カリウム(K_4Fe(CN)_6)と二価金属(Cu,Ni,Co,Zn)の硝酸塩水溶液を混合することにより、沈殿として不溶性フェロシアン化物を調製した。粉末試料のSEM観察では、非常に細かい超微粒子(約50nm)が集合して、より大きい粉末粒子(約30μm)を形成している。XRDの結果から、KZnFC以外の4種類は、FCC構造の不溶性フェロシアン化物であることが同定できた。Pd^<2+>の吸着前後におけるEPMA分析結果から、イオン交換は主にK^+とPd^<2+>の交換が主体である。 2.不溶性フェロシアン化物の吸着速度は比較的大きく、KCuFCに関しては、10分で99.9%という高い吸着率を示した。吸着速度の序列は、KCuFC>KNiFC>KCoFCであった。Pd^<2+>吸着に及ぼす硝酸濃度の影響を調べ、0.3〜7.0Mの広い硝酸濃度範囲において、90%を超える高い吸着率を得た。KCuFCおよびKCoFCはそれぞれ低硝酸濃度、高硝酸濃度において分配係数は低下したが、KNiFCでは、全領域で99.9%となり、高い吸着率を示した。Pd^<2+>吸着に及ぼす温度の影響は、10〜70℃の温度範囲において、80%を超える高い吸着率を得た。KCuFC,KNiFCおよびKCoFCは30〜50℃付近でPd^<2+>吸着率が最大となった。吸着等温線を作成し、Langmuirプロットを行うことで飽和吸着量を算出し、KCuFCが最も大きい飽和吸着量Q_<max>2.07mmol/gを有することが分かった。Q_<max>の序列は、KCuFC(2.07mmol/g)>KNiFC(1.85mmol/g)>KCoFC(0.96mmol/g)であった。KCuFCにPd^<2+>を飽和吸着させ、400℃で熱分解し、さらに11.6MHClで処理することで、PdO純度:82.3%の不溶解残渣を得た。 3.KCuFCとNa-ALG水溶液の混練ゾルをCa(NO_3)_2溶液中に滴下することで、KCuFCを内包したアルギネートマイクロカプセル(KCuFC-MC)を調製した。SEM観察により、KCuFC-MCの直径は約1mmで、内部および表面に全体的にKCuFCが固定されていることが分かった。さらにEPMAによる分析では、KCuFC-MC中のKCuFC粉末に選択的にPd^<2+>が吸着されていることが分かった。
|