研究課題/領域番号 |
17360451
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長谷川 晃 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (80241545)
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研究分担者 |
佐藤 学 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (40226006)
藤原 充啓 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (60333861)
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キーワード | 軽水炉炉心構造材料 / ステンレス鋼 / 溶接健全性 / 核変換ヘリウム / 照射誘起偏析 |
研究概要 |
本研究においては、軽水炉炉心構造材料が使用中に中性子の照射を受け、格子原子との(n,α)反応によって材料中に発生し蓄積するヘリウムが、その後の補修溶接による加熱で材料をどのように劣化させるかについて、模擬的な加熱実験と微細組織変化の解析から、劣化予測モデルを立てることを目的としている。本研究ではそのための手法として、1.加速器によるヘリウム注入と、2.模擬的な加熱処理、3.透過型電子顕微鏡による微細組織観察と評価を用いて、4.ヘリウムキャビティの形成条件のモデル化、5.粒界におけるヘリウムキャビティの形成モデル、6.キャビティ形成材におけるその後の追加的な照射による粒界偏析への影響、7.粒界脆化とキャビティ形成の関係を明かにする。 17年度は試験方法の確立のためにSUS316鋼についてヘリウム注入と加熱処理実験を行い、下記のような成果を得た。 10ppmおよび100ppmヘリウム予注入材の850℃および1050℃での5分間の短時間加熱を行い、その後の透過型電子顕微鏡による微細組織観察により、結晶粒界への微細なバブルの析出についての情報を得た。結晶粒界および粒内でのヘリウムキャビティの形成は短時間加熱では顕著に起こらないことが明かとなった。一方、10appm予注入後の300℃での1dpaの水素イオン照射では、予注入しない材料に比較して結晶粒界近傍にキャビティが約40倍の数密度(4x10^<21>/m^3)で形成し、かつ粒界近傍に50nm程度の幅にわたってキャビティの希薄帯を形成することが明らかになった。850℃と1050℃の熱処理だけでは明確なキャビティ形成が起こらないことから、ヘリウムの拡散がかなり遅いこと、一方ではじき出し損傷が起こるような環境下では、ほとんど動かないヘリウムを含む欠陥集合体が核となって微細なキャビティを形成し、それによって結晶粒界近傍での空孔の拡散を抑制していることが明かとなった。
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