研究概要 |
3波長(397,866,850nm)のレーザ光を用いて量子跳躍実験を行い,単一カルシウムイオンの観測に成功した.具体的には以下の通りである.前年度の実験によりレーザアブレーションにより発生したカルシウムイオンを四重極電極によりトラップし,2波長のレーザ光(397,866nm)によりレーザ冷却の確認(光電子増倍管による蛍光測定)および冷却されたイオン雲の可視化(ICCDによる撮影)が可能になっている.単一イオン観測に向けて,まずアブレーションレーザ強度および初期トラップ電圧の最適化を行い,捕獲イオン数との関係を実験的に調べた.これにより少数イオンの捕獲が可能になった.また冷却レーザ光の波長安定化の精度を上げることにより高効率のレーザ冷却が可能となった.さらにイオンからの蛍光を光電子増倍管により観測するための光学系を再度精査しバックグランドを取り除くなど高度化を行った.以上により少数イオンの高効率検出システムを確立することができた.さらに観測されているイオン数を確定するために量子跳躍実験を行った.これはトラップされたイオンをレーザ光(850nm)により準安定状態に遷移させることで,蛍光(397nm)のオン・オフを行うものである.この実験によりトラップされているイオンが,独立に蛍光をオン・オフすることから,トラップイオン数を蛍光により確認することができる.これを利用して捕獲イオン数を明らかにするとともに,真空度とバックグランドガスとの衝突によるイオン捕獲寿命との関係を明らかにした.
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