化学的安定性を有し、かつ、プロトン伝導性が高いストロンチウムセレートージルコネート固溶体を電解質とした薄膜燃料電池の試作、試験を行った。パルスレーザーでポジション法を用いて作成した燃料電池は、試験を行った500℃〜700の範囲で良好に作動した。バリウムセレートに対して有効であったサマリウムーストロンチウムコバルタイトカソードやニッケルアノードは本電解質に対しても有効であった。また、産業応用が可能な薄膜電解質の調製法としてスラリーコート法の検討を行った。焼結助剤としてコバルトを加えた系では、試料の緻密化についての改善が見られたが導電率が減少した。一方、電解質の原料として用いる炭酸塩や単独酸化物の混合物を、か焼を経ずに直接スラリーとしてコートし焼成することで良好な膜の形成が可能であることが判明した。このような方法により作成した燃料電池についても良好な発電特性が確認された。 以上のこれまでの検討により、プロトン伝導性酸化物の中で、化学的な安定性を備えるジルコネート系電解質を用い、実用性の高いスラリーコート法により燃料電池を構成する手法を確立することができたと考えられ、今後、スケールアップによる試験が望まれる。
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