研究課題
(A;DMの細胞内動態)現在望み得る最高の条件でタイムラプス実験を行うための装置と技術を完成させた。それを用いて、我々独自の方法により可視化されたDMを持つ細胞(COLO 320DM-GFP株)を用いて、DMの細胞内動態、微小核形成と排出過程をタイムラプス観察により検討した。その結果、微小核の形成機構、微小核内容物の排出機構、および、微小核を持つ細胞のアポトーシス誘導に関して、新規で重要な知見が得られた。これらの研究は次年度も引き続き行ってからとりまとめる。一方、DM上の2本鎖切断がDMの凝集と微小核への取り込みの原因となることについて、Genes Chrom.Cacner誌に公表した。微小核や核内の様々な場所での遺伝子発現状況を、RNA/DNA同時FISH法や、CFPで可視化したDMやHSRからYFPで可視化されたRNAが誘導発現する細胞株を樹立し、解析を行った。得られた成果はMol.Cancer Res.誌に公表したとともに、残りの成果は投稿準備中である。(B;染色体外遺伝因子による遺伝子増幅)回文配列や高度反復配列が遺伝子増幅に与える影響を検討した結果、前者は遺伝子増幅を強く促進したのに対し、後者は影響がなかった。また、がん組織内の状況を模した低酸素状態は、遺伝子増幅を促進することを見いだした。さらに、末端がヘアピン構造であるプラスミドは、IR/MARを持つことに依存して、極めて多数の染色体外エピソームとして安定に細胞内で維持されるという重大な発見をした。さらに、HSR形成に特異的な組み換え配列を多数同定して配列決定を行った。これらの一連の成果は、遺伝子増幅の機構を考える上で極めて重要であり、順次投稿を準備中であるとともに、一部については特許申請を行った。(C;遺伝子増幅を利用した蛋白質生産)増幅配列が受けている発現抑制を解除する必要があった。そのために、様々なDNAメチル化阻害剤やヒストン脱アセチル化阻害剤を検討した結果、目的にかなった薬剤を特定することができた。
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Biochemical and Biophysical Research Communications 358
ページ: 806-810
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