研究概要 |
一般的に,相同DNA組換えの要である相同DNA対合反応は,RecAやRad51などRecA型蛋白質がATPを補助因子として行なう.我々は,Mhr1などの一群の蛋白質群がATPを必要としない相同DNA対合を行なうこと,また,ローリングサークル型DNA複製開始に働くことを明らかにしてきた.本研究は,RecA型と非RecA型蛋白質による相同DNA対合反応を比較することにより,相同DNA対合の基本機構を明らかにすることを目的としている.また,RecA型蛋白質では稀なDNA複製開始を非RecA型蛋白質は組換えと共に担うことなど,RecA型と非RecA型蛋白質との違いを分子レベルで解明することを目的としている.材料として,RecA型蛋白質としてRecA(大腸菌,高度好熱細菌)を非RecA型蛋白質としてMhr1(パン酵母ミトコンドリア)とRecO(高度好熱細菌)を扱う. 平成17年度は,NMRと電子顕微鏡による分子構造解析,FRETや変異法によるDNA結合部位解析,試験管内反応解析を行い,以下の進展があった.1.NMR分光法を用いて決定したMhr1に結合した一本鎖DNAの立体構造は,RecAやRad51へ結合した一本鎖DNAと共通の立体構造を形成しており,これらの蛋白質が糖・塩基間のCH-π相互作用を軸にした共通の分子機構で相同DNA対合を行なうという仮設が裏付けられた.2.RecOとRecAコアドメインについて,NMRによる構造解析や分子間相互作用解析の基礎になる主鎖アミドプロトンシグナルの帰属を終えた.3.Mhr1では,FRETによって示唆されたDNA結合部位近くのアミノ酸について,また,RecA蛋白質ではDNA結合部位と考えられているループ1,ループ2について複数の変異体を構築し,それらの相同DNA対合能を解析した結果,各蛋白質におけるDNA結合部位についての手がかりを得た.
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