研究概要 |
相同DNA組換えの要である相同DNA対合反応は一般的にRecAやRad51等RecA型蛋白質がATPを補助因子として行なう。我々は、Mhr1等一群の原核・真核生物の蛋白質群がATPを必要とせずに相同DNA対合を行なうことを明らかにしてきた。本研究は、RecA型と非RecA型蛋白質による相同DNA対合反応の違いを分子レベルで解明・比較することで、相同DNA対合の基本機構を明らかにする目的で行った。RecA型蛋白質としてRecA(大腸菌、高度好熱細菌)を非RecA型蛋白質としてMhr1(パン酵母ミトコンドリア)とRecO(高度好熱細菌)を扱う。 平成18年度は以下の進展があった:1.NMR分光法を用いてRecOに結合した一本鎖DNA(ssDNA)がRecAやMhr1へ結合したssDNAと共通の立体構造を形成することを明らかにした。これにより、DNAに特有な糖・塩基間のCH-π相互作用を軸にした分子機構で相同DNA対合反応が起こるという仮説の普遍性が確認できた。2.RecA型蛋白質による相同DNA対合反応は、蛋白質がまずssDNA部分に結合した後、続いて二重鎖DNAと相互作用することで進行する。しかしながら、生体中のssDNA部分はssDNA結合蛋白質(SSB)に覆われているため、RecA型蛋白質は結合できない。我々は、試験管内反応解析の結果、RecOはsSBが結合したssDNAにも結合できること、また、電子顕微鏡による解析によりSSB-ssDNA複合体にRecOを与えるとRecO-ssDNA複合体と区別がつかない構造体になることを明らかにした。3.RecOはRecAが行う相同DNA組換えでの補助機能が知られているが、RecO・一本鎖DNA複合体にRecRが働くとRecAがssDNAへ結合できるようになることを明らかにした。2,3から、RecOについて新しい機構モデルを提唱できた。
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