研究課題/領域番号 |
17370007
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
綿貫 豊 北海道大学, 大学院水産科学研究院, 助教授 (40192819)
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研究分担者 |
佐藤 克文 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (50300695)
森 貴久 帝京科学大学, 理工学部, 講師 (90367516)
高橋 晃周 国立極地研究所, 助教授 (40413918)
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キーワード | 行動学 / 海洋生態 / 生態学 / 先端機能デバイス / 環境変動 |
研究概要 |
1)スコットランドのメイ島でヨーロッパヒメウにカメラロガーを装着し、そのマイクロハビタット利用と餌獲得を明らかにした。また、背中と首に加速度深度ロガー(D2GT)を装着し、体の加速度から潜水中の足かきを、首の加速度変化から採食行動を研究した。ヨーロッパヒメウは岩やソフトコラルが優先するハビタットで主にギンポを食うとともに、砂ハビタットでの採食も頻繁におこなうことがわかった。餌生物を映像で確認はできなかったが、砂ハビタットでは、イカナゴを捕食していたと考えられ、この場合は最適潜水モデルがあてはまりやすいと予想された。ひとつの潜水バウトでは、砂か岩いずれかのハビタットを利用し、1日のなかでは両方のハビタットを利用する個体が多かった。砂ハビタットで採食する場合は、バウト中の深度変化が小さく、体軸を下に向け、時折頭だけ動かして嘴を砂にはげしくつつき入れる行動が、画像および胴体と首の加速度変化から確認された。岩やソフトコラルが優先するハビタットでは、底滞在中も体が水平になることが多く、横への移動が頻繁であると推定された。岩やソフトコラルのハビタットで採食中は他の個体はまったく撮影できなかったが、砂のハビタットで採食中はしばしば他の個体が写っていた。海洋環境変化によって主要な餌が利用できなくなった場合、それに替わる餌を捕食することがどのようなメカニズムで海鳥の生活に影響するか明らかにする為に、こういった映像データは役に立つだろう。これらの成果は、日本島学会、太平洋海鳥会議で発表された。 2)アラスカのプリビロフ島で、ハシブトウミガラスに深度温度ロガーまたは加速度深度ロガー(D2GT)を装着しその採食行動を調べるとともに、雛への餌の観察、胃内容物の調査、血液の安定同位体比の分析によって、これらの個体の食性を明らかにした。2004年は2006年に比べて水温は全体的に高かった。2004年には高SST海域の利用頻度が高く、また潜水深度分布のピークが水温路肩直下の深度と一致していた。一方で2006年は島に近い低SST海域側の利用頻度が高く、潜水深度分布のピークと路層の深度との関連性は、2004年ほど明確ではなかった。2004年にはイカナゴ、タラが優占したのに対し、2006年にはイカ、カレイ、タラが優占していた。ハシブトウミガラスは、温暖な2004年には、発達した路肩直下で豊富な生物を主に捕食していた一方、寒冷な2006年には、路層と無関係に鉛直分布する生物を捕食していたと考えられる。すなわちハシブトウミガラスは、年によって変化する水温構造と、それによって生じる餌生物の種組成や鉛直分布の違いの影響を受け、異なる年の間で採餌潜水行動を変化させているものと考えることができる。
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