研究課題/領域番号 |
17370011
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山口 淳二 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10183120)
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研究分担者 |
池田 亮 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (00372269)
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キーワード | 植物免疫 / シロイヌナズナ / 細胞死 / 過敏感反応 / CAD1 / サリチル酸 / 補体 / 病原菌抵抗性 |
研究概要 |
植物が病原体に対して抵抗性を示す機構、すなわち植物が外敵(病原体)から自己を守るしくみは、現在「植物免疫」と総称されている。植物は、動物における食細胞やリンパ球のような免疫に特化した可動細胞をもたない。そのため、細胞は、個々に病原体の認識から防御反応の誘導や隣接細胞への警告シグナルの伝達までも行ない、ときにはプログラム細胞死(PCD)を誘発し病原体の全身感染を妨げる。このような免疫に関ずる分子機構は、シロイヌナズナやイネの変異体を用いた分子遺伝学的解析によって明らかにされつつある。本研究室においてもPCDや防御反応を制御する分子実体を解明するため、シロイヌナズナ恒常的細胞死活性化変異体cad1(Constitutively activated cell death 1)を単離し、その解析を実施した。 cad1変異体は、細胞死形質のみならず恒常的なPR遺伝子(感染時特異的遺伝子)とPDF1.2遺伝子(ジャスモン酸応答遺伝子)の発現誘導が観察され、ウイルスの細胞間移行や長距離移行を阻害する抵抗性形質を獲得していた。原因遺伝子を単離した結果、CAD1遺伝子は、動物の自然免疫に必須である補体やNK細胞が病原体やがん細胞に放出するパーフォリンに保存されているMACPF(Membrane Attack Complex and Perforin)ドメインをもつ新規タンパク質をコードしていた。この変異体では、(1)野生株Colと比べてサリチル酸の内生量が約32倍、またジャスモン酸の内生量が約2.3倍に上昇していること、(2)サリチル酸を分解するPseudomonas由来のサリチル酸水酸化酵素を導入した形質転換体とcad1変異体の二重変異体では、cad1にみられる細胞死形質が抑制されること、が明らかとなった。現在CAD1タンパク質の機能に関する研究を進めている。
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