これまでの研究成果により、遺伝子型の解析からフォトトロピンはその発現量に依存して生理反応が応答することがわかった。そこで数百個体にもおよぶphot2形質転換植物を作成し、それぞれの発現量をイムノブロッティング解析を行い、発現量の異なる植物体群のプールを作成した。この形質転換植物を使って、葉緑体逃避運動・花茎の光屈性・葉の伸展度合いを調べた。前者2形質に関しては、phot2の発現が増えるとその反応は大きくなることがわかり、同程度の光強度の時はphot2の蓄積量が増えると、葉緑体の逃避速度が増し、より花茎が屈曲した。しかし、イムノブロッティング解析の検出限界濃度以下でも葉はほぼ完全に伸展したので、発現量と明確な相関関係は認められなかった。つまり、phot2が必要とする発現量は、生理現象に依存して異なることがわかった。また世界中の野生株のphot2遺伝子型と葉緑体光逃避運動の運動速度を測定した。その結果、phot2の遺伝子多型は、2つのタイプに分類され、氷河期前に地理的に分離し、独立して遺伝子の変異が蓄積されたことがわかった。しかしながら、これらの多型に依存した形質は認められなかった。 一方で、葉緑体光集合運動の情報伝達因子と考えられるJAC1遺伝子付近のゲノム解析により、JAC1遺伝子は2つの遺伝子群に分けられた。このうち、N端側にのみpolymorphismsが認められたが、C端側にはほとんどなかった。さらにN端側上流のpolymorphismの頻度はJAC1遺伝子と一致し、C端側下流ではほとんど認められなかたが、さらなる下流では多くの変異が認められ、その多型はaccession numberと一致している。これらの結果は、JAC1遺伝子ないで認められるpolymorphismは染色体間での組み換えが起きた結果ではなく、染色体の構造上の問題と考えられる。
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