研究課題
昨年度までの研究によって、進化の過程で葉緑体ゲノムから核に転移した遺伝子群はコアプロモーター領域の構造に特徴的な類型のあること、この類型は正常な転写調節に必要であること、さらに、植物核遺伝子群のプロモーターを構成する上流調節領域とコアプロモーター領域は、それらを組み合わせたときに正常な転写が生じるかどうかによって、いくつかのサブグループに分類されること等が明らかになった。これらの知見は、高等植物の核ゲノムでは機能的に分化した多様な転写開始複合体が使われており、それらを介した高次の転写制御ネットワークが存在していることを示唆している。本年度の研究では、これまでの生化学・分子生物学的アプローチに加えて、新たにゲノム科学的なアプローチを導入し、このネットワークの多様性の解明を進めた。まず、植物のコアプロモーターを網羅的に同定/解析するために、新たに、CT-MPSS法と名付けた転写開始点の超ハイスループット決定法を開発した。この方法用いてシロイヌナズナの核ゲノム上に、およそ16万の転写開始点タグ配列をマップした。これは、植物の転写開始点に関する情報としては、現時点では世界最大の規模である。次に、これらの転写開始点情報を基にして、その近傍にあるコアプロモーター配列の包括的解析を進めた。その結果、例えば、動物ゲノムの転写開始領域に頻出するCpGアイランドが植物ゲノムでは見出されず、動物のCpG配列に相当するニッチを植物ではピリミジンに富んだ配列が占めているなど、動物ゲノムと植物ゲノムでは、コアプロモーターの構造や性質に様々な差異のあることが明らかになった。以上の研究成果を整理して一般に公開するため、新たに、植物プロモーターデータベースPpdbと名付けたデータベースを作成した。
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http://ppdb.gene.nagoya-u.ac.jp