研究概要 |
卵巣は受精のための卵母細胞を供給することにある。成熟した脊椎動物の卵巣においては,濾胞成長,排卵,排卵後の組織修復というプロセスが,それぞれの種に特有のサイクルでくり返えされる。メダカでは,このサイクルが1日である。メダカが,他の生物では類を見ない,このような速いサイクルで排卵することができる理由は,排卵後の卵巣に残留する排卵後濾胞組織を迅速に処理できるからと考えられる。本研究の目的は,メダカ卵巣の排卵後濾胞組織の迅速処理が如何に達成されるかを解明することである。本年度においては,以下の成果を得た。 1.メダカ卵巣において,排卵後の卵巣に残留する濾胞組織が迅速に処理される過程を,形態学的に調査した。その結果,排卵後24時間以内で完了するとことを明らかにした。 2.残留濾胞組織が消滅する過程では,細胞外マトリックスの分解・消失が起こる。そこで,濾胞組織に存在するコラーゲン(タイプIとタイプIV)の分布を調査した。これら2種のコラーゲンcDNAの単離,in situハイブリダイゼーション法によるmRNAの発現解析,さらに2つのコラーゲンに対する特異的抗体の作製,免疫組織化学的解析により局在の調査を実施した。タイプIコラーゲンとタイプIVコラーゲンは,それぞれ濾胞組織の莢膜細胞層と顆粒膜細胞層に局在し,それらの消失のタイミングは濾胞組織の消滅のプロセスと一致した。 3.昨年度までの解析から,残留濾胞組織が分解・消失する過程で,ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ/プラスミン系の関与が示唆されたので,この仮説の妥当性をさらに確かめる実験を行なった。特異的抗体を用いたウェスタンブロット解析によって,メダカ卵巣の排卵後濾胞組織抽出液にウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータとプラスミンが検出されること,プラスミンは濾胞組織に存在する細胞外マトリックスを効率的に分解することが確かめられた。
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