研究概要 |
「内顎類-外顎類システム」(「内顎類[=欠尾類(=カマアシムシ目+トビムシ目)+双尾類(=コムシ目)]+外顎類[=単関節丘類(=イシノミ目)+双関節丘類(=シミ目+有翅昆虫類)]」と表記できる)は昆虫類の高次系統として広く受け入れられてきたが,近年のさまざまな分野からのチャレンジは、「内顎類」のステータスや構成群の類縁に関して、問題点を指摘する。しかしながら、これらのチャレンジ間の議論は定まることもなく、また、最近の分子系統学的アプローチも、分岐が深くしかも極めて短期間に放散したと考えられる昆虫類のベーサル・クレードには、有効な議論を発展できずにいる。本研究の目的は、昆虫類の最ベーサル・クレードと目されるカマアシムシ目の発生学的知見を初めて明らかにすることにより、昆虫類のベーサル・クレードを比較発生学的立場から明確に再構築することにある。 本年度は、カマアシムシ目の胚発生をさらに厳密に検討した。特筆すべきは、100μmと極小の卵ではあるが、その解剖法を確立することにより、内顎口形成が明らかになり、また、神経形成への腹器様構造の関与が示されたことである。すなわち、カマアシムシ目においては、口褶は3顎節背板に由来するものの、下唇背板は内顎口の後縁をも被覆するという特異な内顎口形成が起こることを明らかにし、他の内顎類の内顎口形成との間には相同性が見出せない、したがって、前年度示唆した、内顎類の多起源性を強く支持する結果となった。また、昆虫類とは大きく異なり多足類のそれに類似する神経形成様式を見出した。これにより、カマアシムシ目は、現在考えられているより、さらに原始的なクレードを代表する可能性が強く示唆され、また、昆虫類の単系統性の再検討の要がさらに認識された。
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