研究課題
タンパク質性の感染因子であるプリオンは、スクレイビーや狂牛病など哺乳類の神経変性疾患が発端となって研究が進んできた。しかし、出芽酵母にもプリオン的にふるまうタンパク質が多数あることがわかってきたため、現在ではプリオンの概念はかなり普遍的なものとなっている。プリオンが増殖していく際には、異常型タンパク質(プリオン)が自己触媒的に正常型を異常型に転換し、結果として、規則的に重合した分子間βシートからなるアミロイド様の線維を形成する。また、プリオンが伝搬(感染)していくためには、その線維状タンパク質がどこかで分断して増殖する必要がある。これらの過程において、プリオン線維がどのようにできていくのか、またプリオンの伝搬がどのように起こるのか、ということに関して分子機構は不明である。そのような状況の下、申請者は、出芽酵母のプリオン現象をモデルにしてプリオン線維の成長を一本一本観察する実験系を構築している。そこで本申請研究では、これまでは「1線維」のレベルだった研究を二つのちがったベクトル、「1分子」および「1細胞」レベルに発展させることを目的とする。本年度は、本研究資金によって雇用した博士研究員のおかげで、「1分子」レベルでの研究が大きく進展した。具体的には、スライドガラス表面に固定した酵母プリオンタンパク質を起点として、全反射蛍光顕微鏡により、プリオンの線維成長を実時間で解析できるようになった。この観察を多数行い、統計的に処理した。さらに、線維の密度も1分子レベルでの観察により、初めて見積もることができた。これらの結果を合わせてモデルを構築して考察した結果、プリオン線維の成長過程についてこれまでに知られていないステップを見いだすことができた。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Genes to Cells 11
ページ: 1085-1096
Journal of Biological Chemistry 281
ページ: 21813-21819