研究課題
プリオンは蛋白質性の感染因子である。プリオンの概念は、羊のスクレイピー(クロイツフェルトヤコブ病、狂牛病なども含む)の感染機構を説明するためにPrusinerが提唱した概念に端を発する。が、近年では酵母にもプリオン的な挙動をする蛋白質が複数あることがわかってきており、プリオンの概念はかなり普遍的なものとなってきた。プリオンの本質は、何らかの原因で生じた異常型蛋白質(プリオン)が自己触媒的に正常型を異常型に転換する点にある。その異常型プリオンは規則的に重合してアミロイド様の線維となることが知られている。また、プリオンが伝搬(感染)していくためには、その線維状蛋白質がどこかで分断して増殖する必要がある。しかし、プリオン線維がどのようにできていくのか、またプリオンの伝搬がどのように起こるのか、ということに関して分子レベルでの説明はなされていないのが現状である。そのような状況の下、申請者は、安全な出芽酵母のプリオン現象をモデルにしてプリオン線維の成長を一本一本観察する実験系を構築している。そこで本申請研究では、これまでは「1線維」のレベルだった研究を二つのちがったベクトル、「1分子」および「1細胞」レベルに発展させることを目的とする。17年度には、生きたままの酵母内での巨大なプリオン凝集体(Sup35-GFP)の挙動を追跡し、その結果、プリオン凝集体は細胞の成長に伴って脱凝集してオリゴマーとして細胞質に拡散する、つまり、巨大なプリオン凝集はダイナミックな性質を持つことを明らかにした。そこで18年度はこの結果を踏まえて、細胞内にて拡散しているオリゴマーの動態を蛍光相関分光法や半変性アガロースゲル電気泳動法などにより詳細に解析した。
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Journal of Biological Chemistry 282
ページ: 4076-4084
Genes to Cells 11
ページ: 1085-1096