研究概要 |
タンパク質はRNAと協働し、リボヌクレオプロテイン複合体を形成し、高特異的な遺伝情報変換過程に働く。本研究では、遺伝暗号翻訳過程に注目し、まずtRNAのプロセシングおよび転写後化学修飾の過程において働くCCA付加酵素(RNAポリメラーゼ)およびMnmAチオ化ウリジン合成酵素とtRNA(前駆体)との複合体について、各反応ステップの複数の結晶構造(スナップショット)を決定することで、高精度・高特異的な化学反応を触媒する動的なメカニズムを分子動画として原子分解能で明らかにした(Nature 2006, Nature 2006)。これらの動的過程では、核酸とタンパク質が協同的に構造を変化させながら活性化して行き、正確な化学反応を可能にしていた。さらに、真核細胞やその祖先となる古細菌の翻訳系酵素は、複数のタンパク質が(超分子)複合体を形成し、統合された化学反応(チャネリング反応)を触媒すると考えられる。本研究では、第2に、tRNAの化学修飾や間接的なアミノアシル化に働くチャネリング複合体(TusE・tRNA・MnmA、TYW1-4、box C/D snoRNP)、アミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)分子複合体(MARS)の再構成と予備的な結晶化に成功し、構造研究を推進している。また、古細菌において3つの連続した化学反応を触媒してGln-tRNA^<Gln>を合成するGatDEアミド基転移酵素とtRNA^<Gln>との複合体のX線結晶構造解析を行い、統合された連鎖反応の触媒機構、さらにアンモニア分子を輸送する分子トンネルを明らかにした(Science 2006)。第3に、タンパク質が細胞内から膜を隔てた細胞外へ輸送される一般的なメカニズムを解明するために、細胞膜(真核細胞では小胞体膜)を介した新生ペプチドの輸送を行うトランスロコン(超分子複合体)を構成する膜タンパク質、SecYEとSecDFのX線結晶構造解析を行い、構造決定に成功した。
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