研究課題/領域番号 |
17370037
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
江崎 信芳 京都大学, 化学研究所, 教授 (50135597)
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研究分担者 |
栗原 達夫 京都大学, 化学研究所, 助教授 (70243087)
三原 久明 京都大学, 化学研究所, 助手 (30324693)
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キーワード | セレノシステイン / セレン / 必須微量元素 / セレンタンパク質 / SECIS / セレノシステインリアーゼ |
研究概要 |
必須微量元素セレンは、同属の硫黄と厳密に区別され、特定のタンパク質の特定の位置にセレノシステイン残基の形で取り込まれ、種々の重要な生理的役割を果たす。本研究では、哺乳動物の系に重点を置き、セレンタンパク質生合成に関与する全因子を同定し、それらの機能を解明し、また、セレンの貯蔵、体内輸送、再利用系について、セレノシステインリアーゼとの関連において、個体レベル、細胞レベル、分子レベルで明らかにすることを目的とした。(1)セレノシステイン挿入配列(SECIS)を特異的に認識する新規タンパク質を探索した。具体的には、in vitro転写反応によりSECISを調製し、クロスリンク法を用いてSECISにマウス腎臓由来のタンパク質を結合させた後、MS解析によりタンパク質を同定した。その結果、nucleolinとRAD17がSECISに結合することが明らかとなった。(2)セレノシステインリアーゼ(SCL)はL-セレノシステインをセレンとL-アラニンに分解し、セレンタンパク質の生合成に関与する。ラット由来の野生型SCLとL-セレノシステインまたはL-システインをインキュベーションし、UV/visスペクトルを測定した。L-セレノシステインの場合、補酵素であるpyridoxal5'-phosphate(PLP)とSCLのリジン残基で形成されるシッフ塩基に由来する416nmのスペクトルに変化はなく、反応産物であるセレンに由来すると考えられる低波長側の吸収の増加が見られた。一方、L-システインを酵素に加えた場合では、416nmのピークが減少するとともに、350nmの吸収が増加した。この350nmの吸収増大は、基質とならないチオール化合物の添加によっても見られた。したがって、350nmの吸収は、PLPとSCLのリジン残基とで形成されるシッフ塩基にL-システインのチオール基が配位したことに由来すると考えられた。本酵素とL-システインの複合体のX線結晶構造解析により、L-システインのチオール基がシッフ塩基に配向している様子を捕らえることに成功した。
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