研究概要 |
膜蛋白質の細胞内局在化、ミトコンドリア内での仕分け、膜内構造形成過程におけるソフトな相互作用の解明を目的として下記の成果をあげた。 【1】膜蛋白質に特化したミトコンドリア指向性シグナル配列の解析。ミトコンドリア内膜に存在するABC輸送体(ABCme ; ABCB10アイソフォーム)のアミノ末端には,105残基の膜蛋白質に特化したミトコンドリア標的化シグナル配列が存在する。その構造解析を目指して大腸菌での発現系を設定した。発現したものは封入体となったが,尿素で可溶化でき,精製可能できた。 【2】ミトコンドリア外膜のβバレル膜蛋白質であるミトコンドリア外膜の膜蛋白質組み込み装置(Tom40およびTob55)およびミトコンドリアポリン(VDAC1,2,3)を大量発現した。封入体は,可溶化でき,精製可能であった。Tom40、Tob55ともに精製をすすめ,現在結晶化に向けて適合する界面活性剤での再生条件を検討している。 【3】小胞体膜に蛋白質透過孔を形成するトランスロコンの作用機構の解析を進めた。シグナル配列の膜進入時点で配向を決定する正荷電アミノ酸残基が,25残基離れた場所からもその機能を発揮できることを明らかにした。トランスロコンは予想以上に広い範囲のアミノ酸配列を識別していることが判明した。また,ストレプトアビジンに結合するペプチドタグ(SBP-tag)を使って,ポリペプチド鎖のトランスロコン内での移動を停止・再開できる実験系を確立した。これを用いて,トランスロコンには2本のシグナル配列と2本の膜透過途上の親水性ポリペプチド鎖を収容できることを明らかにした。また,収容されたポリペプチド鎖は,ストレプトアビジンから解離後速やかに膜の反対側に移行し,膜内で正常に配向を決定できた。 これらから,トランスロコンはきわめて柔軟に多数のポリペプチド鎖を収容できると結論した。
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