研究課題
本年度は膜蛋白質の構造形成と小胞体トランスロコンの特性を中心に成果を得た。【1】ストレプトアビジンに結合するペプチドタグ(SBP-tag)とストレプトアビジン(SAv)を駆使し、トランスロコンサブユニットと透過途中のポリペプチド鎖の配置関係を精査した。小胞体トランスロコンはきわめて柔軟で、多数のポリペプチド鎖を収容できると結論し、二つの膜透過孔チャネルが協調的に機能する新規モデルを提唱した。【2】正電荷を多数有する特異な膜貫通セグメントの形成機構を追及した。電位依存性K^+イオンチャ:ネルには6つの膜貫通セグメント(TM)が存在するが、膜電位センサーを形成する4番目のTM(TM4)には正電荷が多数存在する。本年度は、ショウジョウバエのShaker K(v)channelについて、正電荷を有するTM4の組み込みには電荷間相互作用が重要であることを明らかにした。【3】シグナル配列がポリペプチド鎖の膜透過を駆動する:SBP-tagとSAvを用いたポリペプチド鎖膜透過制御実験系を使って、膜透過駆動作用を定量的に見積もることに成功した。膜透過の抑制に必要なSAv濃度を滴定して透過作用を定量化した。(1)膜透過駆動作用はKd=10^<-9>程度のSBP-SAv親和性と拮抗する。(2)シグナル配列に近く、N-末端部分の引き込みとシグナル配列のトランスロコンへの進入が共役する場合には、駆動作用が大きい。シグナルから離れた部位での駆動作用は弱いことを見出した。(3)シグナル配列の疎水性部分にプロリン残基を導入すると、N-末端の膜透過作用が低下する。これらを総合して、シグナル配列のトランスロコンまたは膜内への進入がN-末端の膜透過を引き起こす主要な駆動要因であると結論した。
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