研究課題
(1)SHAP-HA複合体の形成反応を触媒する酵素因子:他の研究者によりTSG6がITIのHCをヒアルロン酸に転移する活性があることが報告された。TSG6を発現させると転移活性は数十倍に上昇し、しかしTSG6を特異抗体カラムにより除去してもその活性は維持される現象を見つけ、その詳細の理解は、目的の酵素因子の解明に重要であると考えた。まずTSG6変異体の影響を調べた。リンクドメインとCUBドメイン単独では上昇活性がない。HA結合能欠如が報告されている二つの変異体の中TSG6(Y47F)は上昇活性を消失したが、TSG6(F105V)は上昇活性が残った。次いで、TSG6立体構造からHC基質との結合が予測されたCUBドメイン中の二つのスレオニン残基の変異体TSG6(T140V)とTSG6(T226V)は伴に上昇活性は影響されず、スレオニン残基は上昇活性には関与しないことが分かった。(2)SHAP-HA複合体の疾患における役割の解析:SHAP-HA複合体形成の欠損マウスと野性型との比較から解析した。オゾンによる気道過敏性モデルでは、欠損マウスは抵抗性であった。D-ガラクトサミン(Ga1N)/リポポリサッカライド(LPS)による急性肝障害モデルでも欠損マウスは耐性であった。LPS刺激に反応して、好中球が肝臓毛細血管類洞表面へCD44-HA相互作用依存的に接着する。この時、結合能はSHAP-HA複合体の形成によって制御されることが分かった。これらの生体での結果は培養細胞実験で見出したSHAPのCD44-HA親和力の賦活化の活性に一致した。一方、卵白アルブミン感作による喘息モデルでは、欠損マウスの気道抵抗は野生型に比べ有意に高かった。免疫複合体(BSA、BSA抗体)による肺損傷モデルでも欠損マウスは敏感であった。肺洗浄液中の総蛋白質量とサイトカイン(TNFα,KC,MCP-1,MIP-2)及び補体成分C5aの量が野生型より多かった。ITIが補体経路の活性化(C5aの産生)を阻害する活性を認め、免疫沈降でITIとC3、C4との相互作用を確認した。従って、ITIのHCがC3、C4に結合し、プロテアーゼインヒビターであるビクニン部分がC5convertase活性を阻害する機構が想定され、ビクニン欠損が影響したと判断した。卵巣癌患者の血清と腹水中のSHAP-HA複合体の濃度を調べ、HA濃度に比べ、複合体の濃度は卵巣癌の転移能と抗がん剤抵抗性と強い相関性があることが分かった。卵巣癌の予後マーカーにもなり得ることが分かった。
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