Gタンパク質は細胞内でGTPが結合した活性型、あるいはGDPと結合した不活性型として存在しており、外界からのシグナルを細胞応答へと導く伝達経路において分子スイッチとして働く重要な分子である。Gタンパク質はαβγの3種類のサブユニットからなるヘテロ3量体Gタンパク質と低分子量GTP結合タンパク質に大別される。本研究では、これらのGタンパク質を介するシグナル伝達の制御機構と機能の解明を目指した。ヘテロ3量体Gタンパク質は7回膜貫通受容体により活性化され、そのシグナルを伝えるが、そのシグナルがどのような分子相互作用により規定されているかは、全く不明であった。ヘテロ3量体Gタンパク質の一つであるGqと相互作用する分子として膜ラフトのマーカータンパク質として知られるフロティリンを同定し、フロティリンがGqからチロシンリン酸化、p38 MAPKへとつながる伝達経路に必須の成分であることをフロティリンのsiRNAを用いたノックダウン実験や、ラフト破壊剤、Srcチロシンキナーゼ阻害剤などを用いて明らかにした。また、私共が先に低分子量GTP結合タンパク質Cdc42の活性化因子として同定した新規Rho GEFであるFRGが神経軸策および樹状突起の伸長においてCD47からのシグナルをSrcを介して受け取り働くことを明らかにした。一方、白血球がバクテリア由来のペプチドにより活性酸素を産生するシステムでRac特異的Rho GEFであるP-Rex1が働いている。そのP-Rex1の3量体Gタンパク質βγサブユニットによる活性化にP-Rex1の分子内ドメイン相互作用が必須であることを種々の欠失変異体などを用いて見出した。
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