Gタンパク質はαβγの3種類のサブユニットからなるヘテロ3量体GTP結合タンパク質であり、外界からのシグナルを細胞応答へと導く伝達経路において分子スイッチとして働く重要な分子である。本研究においてマウス胎児脳から調製した神経前駆細胞および脳切片培養系とアデノウイルス遺伝子導入系を用いてGタンパク質の一つであるGqとJNKを介したGタンパク質共役受容体シグナルが神経前駆細胞の遊走を負に制御することを明らかにした。またGqと相互作用する新規分子Ric-8Aの遺伝子を単離し、Ric-8AがGqからのGDP遊離を促進するグアニンヌクレオチド交換反応因子として働くこと、Gq共役受容体の活性化に伴いRic-8Aが細胞質から細胞膜へ移行してGqシグナルを増幅することを明らかにした。Gqと相互作用する分子として膜ラフトのマーカータンパク質として知られるフロティリンを同定し、フロティリンがGqからチロシンリン酸化、p38 MAPKへとつながる伝達経路に必須の成分であることをフロティリンのsiRNAを用いたノックダウン実験や、ラフト破壊剤、Srcチロシンキナーゼ阻害剤などを用いて明らかにした。また、私共が先に低分子量GTP結合タンパク質Cdc42の活性化因子として同定した新規Rho GEFであるFRGがCD47からSrcを介してシグナルを受け取り、神経軸策および樹状突起の伸長において働くことを明らかにした。さらに、白血球の活性酸素を産生するシステムで働くRac特異的Rho GEFのP-Rex1がGタンパク質βγサブユニットによって活性化される際にP-Rex1の分子内ドメイン相互作用が必須であることを種々の欠失変異体などを用いて見出した。
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