研究概要 |
シャペロニンは,分子シャペロンの代表として細菌から高等生物に至るまで普遍的に存在し,蛋白質の細胞内フォールディングのために特化した蛋白質分子機械として働いている。シャペロニンは分子量約6万の蛋白質分子が14個から18個会合した二重リング構造を取っており,リング内に形成される直径約80Åのキャビティ内に標的蛋白質が閉じこめられて構造形成する。シャペロニンのこの驚嘆すべき作用にはATP結合によるアロステリックな構造転移とATP加水分解などが必要とされるが,その分子機構の詳細はまだ全く不明である。本研究の目的とするところは,熱量計などによる熱力学的測定とストップトフロー法による速度論的測定を駆使して,シャペロニンの作用の分子機構を物理化学的立場から定量的に明らかにすることである。以下の成果が得られた。 昨年度までの結果から、GroEL単一リング変異体を用いて、ATP結合によるアロステリック転移の速度論的解析を行い、GroELモノマーあたり二つのATP結合部位があることを示す結果を得ている。ATPにより誘起されるGroELアロステリック転移のADPによる阻害実験から、400μMATP-100μMADPの条件下では第二ATP結合部位がADPによって占有される。この条件下で、azido-ADPによる光親和性標識を行い、標識GroELを得た。蛍光性亜鉛錯体を用いて標識GroEL中のリン酸基の存在を確認できたので、第二ATP結合部位の存在が確認されたことになる。今後、第二ATP結合部位のアミノ酸配列上の位置を明らかにすることが必要である。
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