研究概要 |
カルシトニンはアルツハイマー病に見られるアミロイド線維を形成するアミロイド形成タンパク質と認識されている。このカルシトニンの線維形成現象を解明するため、固体高分解能NMRの手法を用いて線維形成の反応機構、線維の立体構造決定を行い、線維形成の分子機構を明らかにすることを目的として本年度の研究を行った。さらに細胞内の条件に近づけるため、脂質2分子膜の存在下で起こる線維形成の分子機構を明らかにする研究を行った。 ヒトカルシトニンの線維形成にPhe残基が重要な役割を果たしていることが昨年の研究で明らかになった。本年度はF16L-hCTとF19L-hCT変異体を用いて線維形成速度を固体NMRにより観測した。この結果、どちらの変異体も線維核形成反応と線維成長反応からなる2段階自己触媒反応機構を示し、天然hCTに比べて線維成長の反応速度が遅くなった。この結果から、Phe-16,Phe19はともに線維成長に重要な役割を果たしていることが判明した。 アミロイド様線維形成を行うことが知られているグルカゴンについて、脂質二分子膜存在下で線維形成速度の測定を行った。この結果、二分子膜が存在しない場合に比べて、線維核形成速度は遅くなり、一方、線維成長速度は速くなることが判明した。この結果は、毒性の高いといわれているプロトフィブリルは膜存在下の方が形成速度は速くなることが判明した。 アミロイド線維を阻害する物質について検討した結果、電荷を持つアミノ酸Asp, Glu, Arg, LysはそれぞれhCTの線維形成を阻害することが判明した。反応速度解析を行った結果、これらのアミノ酸は、特に線維核形成反応を阻害することが判明した。
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