研究課題
基本転写因子TFIIEと基本転写因子TFIIHの相互作用の分子機構を解明した。TFIIEαのC末酸性ドメインのフリーの構造とTFIIHのp62サブユニットのPHドメインとの複合体構造をNMR法で解析した。TFIIEのC末酸性ドメインはフリーのときはN末の酸性領域が天然変性状態であり2本のβ鎖と3本のヘリックスからなるコア構造をもっていた。複合体形成に伴って天然変性領域がPHドメインの塩基性領域と結合し伸びた構造をとり、さらにPHドメインとの間に新たなβ鎖が形成されたがそれ以外にもTFIIEαC末サブユニットのコア構造も結合に必要であった。がん抑制因子p53の転写活性化ドメインとTFIIHの相互作用部位とはTFIIEの相互作用は一部重なっていたがTFIIEの方が非常に広い範囲でTFIIHを認識していた。P53は修復にも関与するので転写と修復のスィッチングにこれらの相互作用が関与していることが推察された。またヒストンアセチル化酵素でクロマチン関連因子のEsa1のクロモドメインの構造を解析し5本のβ鎖からなるβバレル構造にさらに新規のβ鎖があるノット型チューダードメイン構造であることを解析した。Esa1のノット型チューダードメインはRNA結合に関与することを見出しクロマチン関連因子のRNA認識の重要性を明らかにした。さらに転写因子PhoBのDNA結合・転写活性化ドメインのフリーの構造とDNA複合体構造を水を考慮した計算法とNMR法を組み合わせて解析した。その他テロメア結合タンパク質TRF2のDNA結合ドメインのMSによる構造解析や基本転写因子TFIIFのMSによる構造解析を行った。ヒトTFIIFはこれまでα2β2のヘテロ4量体であるといわれてきたがMSの実験結果からむしろαβのヘテロ2量体であることを同定し転写の開始前期複合体のTFIIFの構造を議論した。
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