研究概要 |
主要な2課題の本年度における進展について述べる。 1.MCM4のリン酸化の生理的な意味の解明 ヒトMCM4のアミノ末端領域の、7、19、32、54と110位のリン酸化について、DNA複製進行障害時に作動するチェックポイント制御における挙動を調べた。MCM4のリン酸化反応が、DNA複製チェックポイント制御下で亢進することを明らかにしていたが、これら6部位すべてでリン酸化が亢進することと、リンMCM4を含むクロマチンがDNA分解酵素に抵抗性を増すように変化することを明らかにした。このことは、チェックポイント制御とMCM4リン酸化反応との関係性を裏付けるとともに、チェックポイント制御下で、MCM4リン酸化と関連したクロマチン構造の変化(ヘテロクロマチン化)が起こる可能性を示唆する。 2.MCM467DNAヘリカーゼに対するMCM2タンパク質の阻害効果 ヒトMCM2の限定トリプシン分解によって、1-147,148-676,677-895という3領域(ドメイン)に分けられることが判明した。この結果に基づき、全長MCM2とともに、148-676,148-441,442-676,677-895の4つのMCM2断片を、小麦胚粗抽出液中で合成し、タグ精製を行った。精製したタンパク質とMCM4/6/7複合体との関係を調べた結果、MCM467複合体のMCM2467複合体への変換能をもつものは全長のMCM2のみであったが、MCM467のヘリカーゼを抑制する活性については、全長のもの以外に677-895の断片がその活性を有することが分かった。677-895断片の阻害機構については、以下のように、その断片の一本鎖DNA結合能が要因であることが示唆された。まず、我々は全長のMCM2がMCM4やMCM7と同等程度の本鎖DNA結合活性をもち、さらにMCM2内ではカルボキシ末端領域(677-895)が、その活性に必要であることを明らかにした。また、この領域を含む断片が、SV4oT抗原ヘリカーゼ活性も抑制するという結果は、上記結論の妥当性を支持する。これまでの結果を総合すると、アミノ末端から順に、リン酸化制御領域、ATP結合領域そして一本鎖DNA結合領域という、機能分化があると考えられる。今後さらにMCM2タンパク質を細分化し、各機能の最小責任領域を明らかにする予定である。
|