主要な2課題について、本年度の進展を以下に述べる。 1. MCM相互作用因子のMCM2-7複合体との相互作用および、そのMCM467ヘリカーゼに対する効果 DNA複製停止時にMCMヘリカーゼ機能を抑制すると考えられるTIMとTIPINタンパク質とMCM2-7タンパクとの直接的な結合を明らかにした。TIMとTIPINタンパク質が、MCM2を除くMCM3-7各タンパク質と結合性をもつことを定量的に示すことができた。このような結合の特異性から本複合体は、細胞内でMCMに作用する際に、MCM2-7の複合体の構造形成に影響を与える可能性が考えられる。MCM467のATP分解活性に対するTIM-TIPIN複合体の効果を調べたが、現在までに、有意にその活性に影響を与えるという結果が得られていない。 2. ヘリキノマイシンの作用機構 ヘリキノマイシンのDNA複製阻害における標的を明らかにする目的で、様々なヘリカーゼやDM合成酵素の活性に対する本抗生物質の効果を比較した。その結果、MCM467ヘリカーゼが最も感受性が高く、その阻害濃度は細胞DNA複製の阻害濃度とほぼ一致した。作用機構としては、MCM467ヘリカーゼと一本鎖DNAとの結合に影響を与えることが示された。細胞レベルでの実験において、本薬剤はDNA複製チェックポイント系を作動させないことからも、DNA複製での主要な標的は、DNA合成酵素でなくMCMヘリカーゼである可能性が考えられる。
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