研究概要 |
本研究では新規細胞周期チェックポイントである細胞壁合成チェックポイントに関連して、特にダイナクチンの新たな機能としての細胞壁チェックポイント制御機構、について解析を行った。本年度の研究では、細胞壁チェックポイントにおけるダイナクチン複合体の機能を明らかにするために、その局在性に注目した。ダイナクチン複合体のサブユニットの一つであるJnmlpに2HAタグを融合させ、蛍光抗体で染色することにより、タグ付きJnmlpの細胞内局在をドット状の蛍光として観察することができた。Ech Bを用いてグルカン合成を停止させ、GI期で同調させた細胞を用い経時的にJnmlpの局在性を追跡したところ、チェックポイント正常株であるFKS1株では細胞のリリース直後から120分程度まではほとんどのJnmlpが核表面に局在しており、それ以降になると核表面の局在は失われ、芽の先端付近に局在が集中することが解った。一方、チェックポイント欠損株であるFKS1 wac1株ではG1期で核表面に局在しているJnmlpは時間を経過しても局在性を変化させず、核表面に存在していた。また、同様に核膜孔を通した核内輸送系が異常となるチェックポイント欠損株であるsrpl-31株においては時間の経過とともに局在の消失が見られ、Δarpl株においては局在そのものが観察できなかった。wac1株においてはJnmlpの局在性が観察され、Δαrpl株では局在性が失われていたことからJnmlpの細胞内局在化にはDynactinが複合体として機能していることが必要である可能性が考えられた。興味深いことに、チェックポイント欠損株であるwac1, Δarpl, srpl-31株すべてに共通してJnmlpの芽の先端への局在性が失われていた。このことから細胞壁チェックポイントの確立にはDynactinが芽に局在していることが必要である可能性が考えられた。さらにまた、核と芽の先端への局在性をもつDynactin複合体が細胞壁からのチェックポイントシグナルを核へと伝える機能を担っているのかもしれないと考察した。
|