研究概要 |
小胞体は,分泌経路におけるタンパク質の合成の場であると共に,品質管理の場となっている。近年,小胞体の分子シャペロンに加えて,タンパク質の糖鎖修飾が小胞体品質管理において重要な役割をはたしていることが明らかになってきた。本研究では,出芽酵母とシロイヌナズナを用いた分子遺伝学的や生化学的解析によって,糖鎖修飾を介した小胞体品質管理の分子機構を明らかにすることを目的とする。本年度は,酵母小胞体における異常糖タンパク質の分解(ERAD)にあずかるマンノシダーゼファミリーのタンパク質Mnl1pの複合体形成と基質認識の解析の第一歩として,Mnl1pの膜結合性の解析を行った。その結果,Mnl1pはN末端にシグナル配列を持っており,小胞体内腔側の可溶性タンパク質であることが示された。 本研究ではまた,シロイヌナズナの小胞体マンノシダーゼファミリーの解析も行った,シロイヌナズナゲノム中に見いだされた小胞体マンノシダーゼファミリーの遺伝子5種のcDNAとGFPとの融合遺伝子を構築し,シロイヌナズナ培養細胞を用いた一過的発現実験によってその局在を調べた。その結果,3種は小胞体に,2種はゴルジ体に局在していることを示唆する結果が得られた。これらタンパク質の機能を明らかにするため,T-DNA挿入による欠失変異株の作製も行った。現在までに,すべての遺伝子で破壊株が得られており,これら単独の欠損はシロイヌナズナの生育に影響を与えないことが示された。
|