オートファジーは、真核細胞に普遍的に備わる細胞内大規模分解システムであり、細胞成分の代謝回転などに働く。オートファジーでは、オートファゴソームと呼ばれる膜構造が細胞質の一部を囲い込み、それにリソソームが融合して囲い込んだ物の消化が起こる。我々は、オートファジーが細胞内に侵入したA群レンサ球菌(GAS)の捕獲分解にも働くことを見いだし、一種の自然免疫としての機能も持つことを明らかにした。本研究では、このような病原微生物対オートファジーの攻防を病原体オートファジーと名付け、その根底にある分子メカニズムと感染症における意義の解明を目指す。本年度は、GASを捕獲するオートファゴソームの膜動態を、蛍光顕微鏡及び電子顕微鏡により詳細に検討し、膜融合により通常よりはるかに巨大なオートファゴソームがGASを特異的に包み込みながら形成される過程を示した。また低分子量GTPaseであるrabファミリーのある特定のものや微小管の重合と解離のダイナミクスがその形成に必須であることを突き止めた。このrabや微小管は通常のオートファゴソーム形成には関与しないので、病原体オートファジーは、通常のオートファジーと共通の分子基盤を持つものの、より特化した機構であることが示唆される。通常のオートファジーでは基質選択性は見られないが、病原体オートファジーは菌を認識し狙い打つ点でも特異である。さらには、幾つかの証拠から病原体オートファジーの遂行にゴルジ体が深く関わることも見いだしている。
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