脊椎動物の頭部形成には、腹側・後方化分子群の抑制が重要な役割を果たす。頭部形成因子Shisaは、後方化因子Wnt及びFGFシグナリングを細胞自律的に予定頭部神経外胚葉で抑制し、頭部形成を促進する。Shisaは小胞体内で未成熟なWnt及びFGFレセプターと複合体を形成し、タンパク成熟と細胞膜輸送を阻害することでシグナリングの受容を制御する。申請研究は、小胞体内におけるShisa分子動態解明により、小胞体内シグナリング制御機構の分子基盤解明を目標としている。その中でも中心的課題は、小胞体内でShisaと複合体を形成しシグナリング制御に関わる分子群の同定である。現時点までに、Shisaのカルボキシ基側にシグナリング制御に不可欠な10アミノ酸配列を見いだすことができた。同部位を欠失したShisa変異体は小胞体に局在することができず、標的レセプタータンパク質と複合体形成能には維持しているが、標的分子を小胞体に留めることができない。現在、この10アミノ酸と相互作用する分子を同定中である。一方、本年度はShisaファミリー分子群の同定と機能解析をDevelopment誌に発表した。Wnt及びFGFレセプターを小胞体内に留め、シグナリング抑制活性を示す新規ファミリーメンバーにおいても10アミノ酸モチーフは保存されており、同モチーフがShisaによる小胞体内シグナリング制御機構の要となっている可能性を強く示唆するものと考えられる。今後この新しいドメインが小胞体内シグナリング制御に果たす役割を明らかとしてゆく。
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