研究概要 |
WntおよびFGFシグナル抑制分子Shisaは、標的シグナルのレセプター分子と小胞体内で会合し、蛋白成熟過程を抑制する。Xenopus初期胚において、Shisaは頭部神経組織の発生(Yamamoto,2005)や体節構造形成(Nagagno,2006)に不可欠な役割を果たしていることを明らかにしてきた。今年度は、マウス・人Shisa分子ファミリーの同定、およびその機能解析を報告した(Furushima,2007)。哺乳類では、Xenopus Shisaと機能的に相同な4つのShisa分子ファミリーを見いだした。一方、これまでに、Shisaを特異的に認識するウサギ抗体が得られた。内在性ヒトShisaは小胞体内に局在していた。さらに、ヒトShisaの機能抑制は。細胞自律的にWntシグナル受容能を高めることが明らかとなった。内在性Shisaは小胞体内品質管理機構分子と複合体を形成するが、複合体形成分子の機能抑制でもシグナル受容能が亢進した。現在複合体形成分子による、レセプターの蛋白成熟過程制御機構の解析を進めている。一方、我々はヒトShisaを発現する癌細胞株を検索した。これまでの解析で、ヒトShisaは悪性度の高いメラノーマ癌細胞株で強く発現していることが明らかとなった。これらの細胞株におけるShisaの過剰発現は腫瘍転移能を増強し、機能抑制は転移能を抑制することが明らかとなった。これらの解析結果は、WntやFGFシグナル抑制という従来のShisa機能とは異なった、新しいShisa機能の存在を示唆する物と考えられる。
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