研究課題
ショウジョウバエの視覚中枢を解析し、神経幹細胞の形成機構、グリアの形態形成に新たな知見を得た。1.神経幹細胞の形成視覚中枢の1つであるメダラ神経の形成は神経上皮細胞が増殖することに始まる。次に、最外側に位置する神経上皮細胞がProneural遺伝子群に属する遺伝子を発現し、その細胞は直ぐに神経芽細胞となる。これを時系列で追ってみると、最外側から始まるProneural遺伝子の発現は1細胞ずつ内側へ向かって神経上皮細胞列を上っていく。これは波が動いていくようであり、proneural waveと名付けた。今まで知られている神経芽細胞、神経幹細胞の形成は神経上皮細胞から、proneural遺伝子を誘導する一群のポテンシャルを持った細胞が形成され、その後に「確率論的」に神経幹細胞が誘導される、というものであった。しかしながら、本実験系では「決定論的」に規則正しく進むために今まで詳細が不明であった形成機構を明らかにできると考え、解析を進めた。Proneural遺伝子の活性は神経芽細胞を誘導するのに必要十分であることがわかった。メダラ領域にNotchのクローンを作成すると、細胞非自律的にメダラ神経の異常増殖が観察され、ラミナ神経節がメダラ神経節に侵略されるという表現型が見られる。これは今までの知見では説明できない現象であり、Notchシグナルの働きを考え直す必要がある。JAK/STATシグナルの変異の解析からJAK/STATシグナルはproneural waveの進行を負に制御していることが明らかとなった。2.眼柄の形成機構視神経は眼柄というグリア細胞の筒状の構造を通って脳に投射している。この構造が正常に形成されないと視神経の束状化が阻害されることを見出した。また、その時にFocal adhesion kinase、CdGAPr、インテグリンが機能していることを見出した。
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